晴子:「いや〜、崖から落ちそうになったり、トラックに当たりそうになったりと・・・
でもまぁ、何とか着いたみたいやな〜♪」
晴子がそう言いながら車から出てくる。
今いる場所はAIR旅館という旅館の前。
ちなみに、あゆと祐一は車の中で2人、抱き合って寝ている・・・
そうなるのも仕方がないような目に遭ってきた。
実際崖から転落したし、トラックは跳ね飛ばすしと、かなりのことを実行に移してきている。
そんな祐一とあゆを見て、晴子は・・・
晴子:「ん〜、やっぱ免許取ってからにするんやった」
・・・無免許運転は犯罪です。
そんなとき、秋子さん達も旅館に到着した。
佐祐理:「あはは〜、皆さん到着ですよ〜」
先頭をきって佐祐理さんがバスから降りてきた。
その手には何故か『Kanon観光ツアー会社』と大きく書かれた旗を持っていた。
しかも、佐祐理さんはバスガイドに付き物のスーツ姿だった。
舞:「・・・やっと着いた」
美汐:「ここに相沢さんが・・・」
真琴:「あう〜、お腹減った〜・・・」
秋子:「名雪、着いたわよ」
名雪:「うにゅ〜・・・けろぴ〜も食べれるよ〜・・・」
香里:「・・・完璧に寝ぼけてるわね」
栞:「えう〜、ポケットの中がぐちゃぐちゃです〜・・・何ででしょうか・・・?」
北川:「・・・前回、一言も喋ってなかった」
などなど、それぞれが佐祐理さんに着いてぞろぞろと出てくる。
秋子:「ここに祐一さんがいるんですね?」
佐祐理:「はい、それは確かです〜。
・・・ただ、この辺りというだけで細かい場所まではちょっと・・・」
美汐:「仕方ありませんね。 とりあえず中に入りましょう、皆さんだいぶお疲れのようですし・・・」
バスから団体が降りてくるのを見て晴子は・・・
晴子:「おっ、お客さんかいな。 あゆちゃんと祐一君は・・・寝てんのを起こすんも可哀想やし、
ちょっと置いとこか。 ・・・二酸化炭素中毒には・・・ならんやろ♪」
・・・二酸化炭素じゃなくて一酸化炭素です。
まぁ、晴子はそう呟くと、秋子さんたちのほうに向かって歩き出した。
・・・車の中に残されたあゆと祐一は、ゆっくりと眠っていた。
自分の知り合いがまさかここまで追ってくるとは考えることもなく・・・
?:「いらっしゃいませ〜、何名様ですか〜」
妙に間延びした声が旅館の入り口に響く。
観鈴:「って、わっ、お母さん・・・泊まるの?」
晴子:「あほかっ、泊まんのは後ろの人たちや」
晴子は後ろに着いてきている秋子さんたちを指した。
観鈴:「が、がお・・・怒られた・・・」
晴子:「あほっ、怒っとらんわ。 ほれ、はようお客さんを案内し」
観鈴:「は、はぁ〜いっ。 お客さ〜ん、こっちです〜」
観鈴はぱたぱたと音を鳴らし、奥へと進んでいった。
その観鈴に案内され、秋子さん達はそれぞれ部屋に入った。
部屋割りは名雪、秋子さん、真琴、美汐で1部屋。
佐祐理さん、舞、香里、栞で1部屋。
そして、当然北川は1人・・・
誤解があるかもしれないので言っておきます。
作者は北川が嫌いなわけではありません。
ただ、いじりやすいだけです。
その頃、あゆと祐一は・・・
祐一:「う〜ん・・・や、やめてくださいっ秋子さん!! そ、そのジャムだけはっ!!」
・・・壮絶な悪夢を見ているようだ。
祐一:「・・・はっ・・・ゆ、夢か・・・なんであんな夢を・・・」
予知夢かも♪
祐一:「・・・何かすごく嫌なことが聞こえたような気がしたけど・・・気のせいか・・・?
・・・そういえば・・・なんかさっきから体が動かないんだけど・・・
なんでだ・・・?」
祐一は起き上がろうとするが、何かが祐一にくっついてどうやっても起き上がることができない。
祐一:「・・・あ、そうだ、あゆは何処に行ったんだ? あははっ、な、なんだ?」
祐一は起き上がることを諦め、見える限り辺りを見回してみるが、あゆらしい姿を確認することはできなかった。
祐一:「あゆ〜、どこだ〜? く、あははっ・・・な、なんなんだ、このくっついてるものは」
さっきから祐一が『あゆ』と呼ぶたびにもぞもぞ動いている。
祐一からは、晴子が掛けてくれた毛布のせいで何がいるのか隠れて見えない。
祐一:「もしかして・・・あゆか?」
祐一は毛布の中の『何か』に聞いてみた。
?:「むぐぅ〜、むむぐぐむん〜、もぐまもぐむぐ〜」
祐一:(うぐぅ〜、祐一くん〜、ボクはここだよ〜・・・だな)
「・・・あゆじゃないな〜。 あゆなら『うぐぅ』だからな〜。 あゆ〜、何処だ〜」
祐一は分かっていながらもあゆを探し続ける真似をしていた。
?:「むぐぅ〜、もごもっぐぐっぐるるる〜・・・」
祐一:(うぐぅ〜、ここだってぐるるる〜? なんだ、今のぐるるる〜は・・・もしかして・・・)
「あゆ〜、そろそろ放してくれないか? 放してくれないと動けないんだが・・・」
あゆ:「むぐっ!? むぐっむぐ」
祐一:(うぐっ!? わかったよ・・・しかし、俺、よく分かるな・・・」
祐一がそんなことを考えているうちに祐一の束縛が解けた。
あゆ:「うぐぅ・・・祐一くん、気づいてくれないんだもん・・・」
毛布を被ったまま、あゆが非難の目を祐一に向ける。
祐一:「いや〜、ごめんごめんっ。 ま〜ったく気付かなかったよ〜」
あゆ:「うぐぅ・・・酷いよっ。 起きたら毛布のせいで真っ暗だし、祐一くん叩いても何しても起きないし・・・」
あゆはそこまで言って俯いてしまった。
祐一:「あゆ? どうしたんだ、おまえ・・・熱でもあるんじゃないか?」
あゆ:「な、なんでもないよっ!!キスなんてしてないよっ!!」
あゆはブンブンと音の鳴るほどに首と手を振り回している。
祐一:「・・・したんだな、キス」
あゆ:「えぇっ!! な、なんで分かったの、祐一くん?」
あゆは祐一の言葉に本気で驚いている。
・・・ありきたりすぎるだろ。
祐一:「今あゆが言ったから」
あゆ:「えっ? ・・・(考え中) はっ!!(思い出した) うぐぅ・・・しまったよ・・・」
祐一:「んじゃ、お返しだ」
そう言うなり、祐一はあゆを抱き寄せ唇を重ねた。
2人はゆっくりと離れ合う。
あゆ:「祐一くん・・・」
祐一:「あゆ・・・」
そのまま祐一があゆの服に手を掛け・・・
ぐるるる〜
・・・られなかった。
祐一:「・・・あゆ、腹減ってるのか・・・?」
祐一は手を止め、あゆに訊ねた。
あゆ:「・・・うぐぅ、ごめんなさい・・・」
あゆは真っ赤になって俯いている。
そんなあゆを見て、祐一は優しくあゆの頭を撫でてやる。
あやは目を細め、気持ちよさそうに祐一にもたれかかった。
祐一:「・・・あやまらなくてもいいよ。 ・・・何か食いにいくか?」
あゆ:「・・・うん、ごめんね」
再び落ち込むあゆに祐一は・・・
祐一:「たい焼き屋・・・」
・・・と呟いた。
あゆ:「えっ!! 何処っ、何処っ!?」
あゆは『たい焼き』の言葉につられて、辺りをきょろきょろ見回している。
祐一:「・・・でも探しに行こうか? って聞こうと思ったんだけど・・・そのほうがやっぱり良いみたいだな」
祐一は笑いならあゆの頭に手を置いた。
あゆ:「うぐぅ・・・祐一くん・・・ひどいよ・・・」
祐一:「さっ、早く行こうぜ」
あゆ:「うぐぅ、嘘吐いたお詫びに、祐一くんのおごりだね♪」
祐一:「・・・あんまり喰わないでくれよ・・・」
祐一はそう呟いて、元気に走っていくあゆの後ろ姿を追った。
感想はこちら