未沙:「し〜ん、起きて!!」
清が顔を上げると、そこには未沙の姿(顔だけ)があった。
と言っても、未沙には首だけで生きていける能力があるわけではなく、ただ単に未沙が清に思いっきり顔を近づけているだけである。
未沙にはそんな変な能力はない・・・と思いたい・・・
清:「未沙・・・? 大きくなったな・・・顔だけ・・・」
未沙:「むっ・・・反応が面白くない・・・のか面白いのか分からないぞぉ」
未沙は清の反応がいつもと違い冷静(?)すぎるので(清は冷静なのではなく、寝ぼけているだけなのだが・・・)
いじけてそっぽを向いてしまった。
だが、寝ぼけたままの清は、そんな未沙にも気づかず再び深い眠りへ・・・
未沙:「もぅ、清。 放課後だよ? 今日は学校にお泊まりでもするの?」
・・・落ちることは無かった。
清:「放課後? 何を言って・・・」
清が起きあがり辺りを見渡すと、そこには赤く染まった教室と清と未沙の姿しか認められなかった。
清:「・・・何で誰もいないんだ?」
未沙:「だって、放課後だもん」
未沙の的確な答えに、清は少し考える素振りだけ見せた。
清:(・・・え〜っと・・・今日、登校してきて・・・いつものメンバーに挨拶して・・・1限目が始まって・・・あれ?
教科、何だった・・・? ああ、現国だ・・・現国の西村だったんだ・・・んで、それから・・・え・・・き、記憶がない!?)
清:「み、未沙、1つだけ聞いても良いか?」
未沙:「ん? な〜に?」
清:「お、俺・・・今日の1時限目から・・・何してた?」
清はまさかとは思いながらも未沙におそるおそる問いかけた。
未沙:「え、覚えてないの!? ・・・あんな事してたのに?」
清は未沙の言葉に顔に落胆の色を見せ数歩後退った。
未沙も清のその言葉に驚き、そして数歩後ろに下がり・・・「キャッ!?」
ガタッ!! ガラガラッ!! ガッシャ〜ン!!・・・机につまずき、転けた。
清:「お、おいっ、大丈夫かっ?」
清が近づくとそこには、血に濡れた未沙の死体・・・
未沙:「痛たたた〜・・・よいしょと♪」
・・・ではなく、赤い物体にまみれた未沙の元気な姿がそこにはあった。
清:「お、おい・・・それ・・・血じゃ・・・」
未沙:「へ? あ、あぁあぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁっっっ〜!?」
未沙の大声に清はまたもや後退った。
清:「な、なんだよっ? やっぱり怪我なのかっ!?」
未沙:「う゛う゛ぅ・・・大事に胸元にしまっていたトマトジュースがぁ・・・」
清:「しまっとくなっ!!」
未沙のありきたりなボケに、ついつい空中にツッコミを入れてしまう清。
しかも、かなりいいツッコミ、ビシッ!!って効果音があってもいい感じだ。
未沙:「だって〜・・・」
清:「だってじゃない。 ・・・ったく、心配して損し・・・」
清ははっと思い口を詰むんだが、それはすこし遅かった。
未沙:「あれ〜♪ 心配してくれてたんだ〜♪」
清:「ば、ばか言うな!! だ、誰がそんな・・・」
未沙:「ふぅん・・・じゃあ、心配してなかったんだ・・・」
未沙はそう言って俯いてしまった。
すすり泣く声が静かな教室に響き渡る。
清:「え、いや、その・・・そういうわけじゃ・・・」
未沙:「じゃあ・・・私のこと心配だった・・・?
しどろもどろになっていた清に、とどめとばかりに未沙の上目使いのウルウル目が炸裂した。
清:「・・・ああ、心配だったよっ!! これで良いのかっ!!」
さんざん迷ったあげく、清は未沙の思う通り、認めさせられてしまった。
当の未沙はと言うと・・・
未沙:「よっし♪ それでこそ清だよ♪」
こんな調子である・・・
実は清は極度の恥ずかしがり屋で、いつもこんな感じで未沙にからかわれているのだ。
清:「だーっ!! もう、帰るぞっ!!」
清はそう言うと鞄をひっ掴み、とっとと教室を出ていってしまった。
未沙:「あ、待ってよ〜・・・酷いよ・・・置いてくなんて・・・」
未沙はまたもやうつむ・・・
清:「ああぁーっ!! もうっ!! 早くしろっ!!」
未沙:「うん♪」
・・・きそうになったが、清が待っていてくれたのがわかると嬉しそうに駆け寄っていった。
進む 戻る
感想はこちら